元最高裁判事で今年の4月に亡くなられた才口千晴先生の著書『新弁護士読本ー弁護士十年一人前論ー』を読みました。才口先生は倒産法を専門とし、司法試験考査委員や最高裁判事も歴任されるなど偉大な功績を残された弁護士で、数々の論文や書籍も執筆されています。
そんな中で、たまたま書店で目にとまったのが『弁護士読本』なる書籍でした。特に印象深かったのが、「話術の良し悪しは、声(発生)、弁(語り口)、才(センス)、博(教養)で決まる」とのお考え、また法曹の資質五大要素として「①感性:喜怒哀楽が通じあえる心の温かさ、②寛大:共感しあえる心の広さ、③分別:是非分別の判断、④知恵:問題解決の知恵、⑤愛嬌:明朗」と書かれた一文です。
どれも私に不足する要素ばかりですが、その中でも先生が「愛嬌」の重要性に触れた箇所を紹介したいと思います。「私が考える愛嬌は、自ら振りまくものというよりは、内なる姿として発揮される、あなたの優しさや、人のためになることをしようという気持ちの形です」
なるほど、日々、忙しく働いていると忘れがちになる視点ですが、ときには立ち止まって弁護士としての使命を思い返しながら才口先生のお言葉を実践していきたいと思います。
弁護士 市村陽平