ショッピングセンターや公共施設などの大型駐車場の一画で、何か月もの間動いた形跡がなく、乗り捨てられた状態の車両を目にした経験はないでしょうか。実際のところ、弊所でも、所有する敷地内(特に駐車場)に放置された車両があって困っているとの相談を受けることがあります。こんなとき、敷地の所有者は勝手に車両を撤去することはできるのでしょうか。
答えはノーです。長年放置されている違法駐車状態の車両であっても、第三者が勝手に処分することは法的に許されません。また、公道ではなく、私有地に置かれた状態の車両を警察が撤去してくれることも基本的にはありません。では、どうしたらよいのか。
迂遠なようですが、まずは登録事項証明等で所有者を特定した上で、裁判所に土地明渡し請求訴訟を提起することになります。訴訟によって明渡しの判決を取得できたら、強制執行を申し立て、最終的に執行官のお墨付きを得て撤去するという流れになります。これら手続に要する費用はすべて請求する側の負担となります。土地所有者にとってみれば、違法駐車をされた上に、撤去の費用まで負担しなければならないとなると、まさに踏んだり蹴ったりです。おそらく、この手続の煩雑さや費用負担がネックとなって、なかなか私有地での放置車両問題が解消されないのだと思われます。
私も過去に、とある病院の駐車場に乗り捨てられた3台の放置車両を対象にして、まとめて訴訟提起した経験があります。そのときは、すべてが外国籍の所有者(使用者)かつ信販会社の所有権留保付で、所在調査と裁判所類の送達にとても苦労しました。ただ、物事を前に動かしていかなければ、いつまでたっても放置車両は片付かないので、現に困ってみえる方はまずは専門家に相談だけでもしてみるとよいかもしれません。
弁護士 市村陽平