ご相談事例

所有者不明土地問題に関する法改正の動きについて


ご承知のとおり、現在の日本では、少子高齢化や人口減少に伴い、所有者が不明であったり、管理の行き届かない土地建物が増加の一途をたどり、深刻な社会問題となっています。一説には、既に九州地方に相当する面積の土地が、相続手続がとられず所有者不明状態となっていると言われているほどです。このような所有者不明土地問題に対処するため、昨年から、①相続登記の義務付けや、②土地所有権の放棄を認める制度の創設、③共有関係を解消するための新たな制度の導入、④管理不全土地を管理する土地管理人制度の設置などを柱とする、民法・不動産登記法改正に向けての取り組みが進められています。

これまで、所有者の所在がわからない場合や、相続人全員が相続放棄した場合には、「不在者財産管理制度」(民法25条1項)と「相続財産管理制度」(民法952条1項)が活用されてきましたが、いずれもその所有者の所有する全財産を管理しなければならないことから、申立人と管理人双方にとって費用面や手続面での負担が大きく、正直なところ使い勝手はよくありませんでした。今回の改正では、これまでのように「人」ではなく、特定の土地や建物という「財産」に着目して、その適切な利用に対する障害を取り除くための試案が示されており、制度利用を促進することにより、所有者不明土地問題の予防や解消が期待されています。

また、現在公表されている中間試案をみていると、遺産分割の期間制限と、期間経過後に遺産を合理的に分割する制度の創設が、今後の相続実務に大きな影響を与えるのではないかと感じました。中間試案では、相続開始時から10年を経過したときは、相続人は具体的相続分の主張(特別受益及び寄与分の主張)をすることができず、各相続人の法定相続分(又は指定相続分)の割合に応じて分割されるという案が示されています。日頃、相続の依頼を受ける中で、親の遺産だけでなく、祖父母の遺産分割が未了というケースもあり、解決までにかなりの時間を要した経験もありますので、この種の事案では、新制度を活用しての円滑な事件解決ができるものと思われます。

 

弁護士 市村陽平


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