ご相談事例

プロ野球選手の契約更改について思うこと


プロ野球界では、毎年この時期になると来シーズンに向けて選手の補強や契約更改が話題となります。スポーツの中でも特にプロ野球に関心のある私としては、毎年選手の契約更改の報道を見ていて不思議に思うことがあります。それは、いわゆる一発サインをする選手が多すぎるのではないかということです。詳しく内情を知っているわけではありませんのであまり偉そうなことは言えませんが、概ね2~3時間の話し合いの中で球団側から今シーズンの査定評価を聞いた上でその場で直ちに来シーズンの年俸を提示されるという一連の流れをみると、選手の考える時間があまりに短いのではないでしょうか。

普段、われわれが各種契約書や規則などをチェックする場面では、書類を示されてその場で署名することは滅多にありません。重要な契約になればなるほど、不利益な内容になっていないか、評価が間違っていないか、金額の合計が正しいのかなど慎重な検討を要します。また、契約内容を見ておかしいと思えば訂正を求め、疑問があれば納得するまで確認作業をしていきます。プロ野球の場合、球団側は数か月かけて査定する時間がある一方で、選手はその日の数時間で評価を理解しなければならず、しかも代理人をつけない限りその判断を一人でしなければならないというのは酷な気がしてなりません。

多くの選手の対応は、マスコミや世間で、契約更改は下手にゴネず潔く一発で済ませるのが美徳というようなイメージが定着していることも影響しているように思えます。当然、自ら納得した上での一発サインであれば、外野がとやかく言うことはありませんが、それでも一発サインにこだわらず、いったん持ち帰って検討するという姿勢は重要です。それは単に選手個人の金銭面の交渉という意味だけでなく、選手全体の練習環境やファンサービスの向上にもつながっていくはずですし、野球界以外のスポーツ分野ではすでに広がっている動きだと理解しています。

今後のプロ野球の契約更改のあるべき姿として、今のようなセレモニー的な演出はやめた上で、少なくとも、球団からの評価を事前に書面で提示する、質問や意見の機会を与えるといったステップが必要なのではないかと考えます。そして、世間一般に、プロ野球の契約更改も数週間かけて検討することが当たり前なのだという認識が共有されるようになれば、野球界のガラパゴス化は解消されていくのではないでしょうか。

 

弁護士 市村陽平


お気軽にご相談ください。
TEL 0564-26-6222
平日 9:00~18:00(土日祝休) ※事前のご予約で時間外も承ります。