ご相談事例

新しい紛争解決制度について


本日の日経朝刊記事に、弁護士がLINEでトラブルを解決する保険商品に関する記事が掲載されていました。記事によると、シェアリング事業のトラブルに特化した専用保険で、事業者と利用者との間でトラブルが発生した際に、保険会社が調停人となる弁護士を紹介してLINEのチャット機能を使ってオンラインで紛争解決をするそうです。

法的な紛争解決の制度といえば裁判所が主催する訴訟や調停を思い浮かべる方が多いと思いますが、裁判所以外にも、労働局や国民生活センター、弁護士会などが実施している仲裁手続もあり、近年利用件数が伸びています。これらは一般にADR(裁判外紛争解決手続)と呼ばれて、それぞれの分野の専門家が仲裁人となって、対立する当事者から主張を聞き、早期に柔軟な事件解決が図れる点に特徴があります。紛争を嫌う傾向の強い日本の場合、裁判となるとどうしても「おおごと」というイメージで申し立てることを躊躇する方でも、ADRの場合、「ちょっとしたトラブル」の解決という感覚で申し立てることができ、裁判に比べて敷居はずいぶんと低いといえるかもしれません。

上記記事の保険商品では、さらに利用者の使い勝手をよくして、すべてオンラインで手続を進めていくことが予定されているようですが、これは画期的ともいえます。というのも、現行実施されているADRでは、いくら手続が柔軟化されているとはいっても、やはり申立ての際には、紙ベースで申立書を提出し、期日にも解決センターに足を運んで対面で話をすることが原則となります。電子的に保存されている証拠も、いったん紙面にプリントアウトして提出しなければなりません。これらの伝統的な手法をすべて省いてオンライン一本で機能させることは、手続を担う弁護士にとってもかなり困難を伴うと思われます。

無事に保険商品として取り扱われた後には、これまでのADRと比べて成立(解決)件数の割合がどのように変わってくるのかについても紹介して頂けると有り難いですね。

 

 

弁護士 市村陽平


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