ご相談事例

家賃保証業者による賃借物件の明渡しの実行について(2)


注目されていた最高裁判決の言い渡しが今月12日にありました。結果は、家賃保証業者の逆転敗訴(高裁の判決が破棄)となり、これまで使用していた契約条項を差し止められることになりました。

大きく2つあった争点に対する判断のうち、意外だったのが、(あまり注目を集めていなかった方の)家賃保証業者による賃貸借契約解除を規定する契約条項の有効性が認められなかった点です。実務的には、これが認められなくなると、大家さん(賃貸人)が積極的に契約解除に乗り出してくれないと家賃保証業者の負担が膨らむ一方となり、今までのようなビジネスモデルが成り立たなくなります(実際、賃貸経営に無関心で業者に任せきりの大家さんはたくさんいます)。

ただし、今回の判断が賃貸借契約の連帯保証人全般に対して及ぶのか、あくまで「無催告」で解除できると定めていたからいけなかったのか、それとも連帯保証債務の履行をしている場合でも解除ができるという解釈が成り立つからいけなかったのか、判決文からは直ちに読み取れません。一般的には、家賃保証会社が未払いとなっている賃料を大家さんに立て替えて支払った上で賃貸借契約を解除するというのが自然な流れかと考えられますが、今回の判決を前提にすると、大家さんがいったん立替払を受けてしまったら賃貸借契約を解除することすらできなくなってしまうのではないかと危惧されます。

判決の正確な射程や位置付けは、学者先生や裁判官の評釈を待つことになりますが、保証債務の履行がある場合には賃貸借契約を解除できないという部分に思いがけずスポットが当てられてしまうと、この先、賃貸人から明渡しの相談を受けた際の助言には気をつけなければいけなくなるかもしれません。

 

弁護士 市村陽平


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