ご相談事例

墓地埋葬法上の解釈をめぐるトラブル


数年前から弊所が関与している西三河の寺院で、市が下した墓地の経営許可の判断をめぐって周辺住民などから異議が出され、寺院・周辺住民・自治体の三者間で議論が続けられています。異議の内容としては、景観の阻害や地下の下落、土壌汚染の危惧、災害が発生した場合の不安等様々です。

この問題について、寺院(弊所)としては、市が墓地の経営許可をした当初、周辺住民が異議を出したとしても直接的に行政処分(許可)を受けた当事者ではないことから、そもそも異議を申し出る権利資格がないと反論し、市の担当者もこれに同調していました。ところが、潮目が変わったのが今年の5月9日の最高裁判決。この最高裁判決では、これまで先例的判断とされてきた平成12年3月17日第二小法廷判決を結果的に覆して、周辺住民の原告適格(行政処分を争うための権利資格)を結論として認めたのです。判決理由をよく読めば、この判決の事案の特殊性を踏まえたものであることがよく理解できるのですが、結論だけ見てしまうと、すべからく周辺住民にも許可処分を争う権利があるように捉えられてしまい、現在も紛争が続いています。

もっとも、仮に、周辺住民に許可処分を争う権利が認められたとしても、市が下した経営許可の判断が違法や無効となるかどうかは別問題です。5月9日判決でも述べられているように、墓地経営等に係る許否の判断については、法の目的に従った都道府県知事(※本件の場合は市長)の広範な裁量に委ねられているのであり、裁量権の逸脱・濫用が認められない限り、処分の取り消しという結論にはなりません。今後、関与先の寺院としては、墓地埋葬法の趣旨・目的を踏まえて、市の判断に裁量権の逸脱・濫用がないことを積極的に主張していきたいと考えています。

 

弁護士 市村陽平


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