ご相談事例

営業秘密保護の方策について


営業秘密は、自社従業員から漏洩するという事案が多く見受けられます。そこで、会社としては、自社従業員からの漏洩を防止するために、最低限、就業規則と個別の契約書において秘密保持条項を盛り込んでおく必要があります。なお、就業規則だけでは、従業員の退職後にまで効力を及ぼせないリスクが伴いますので、必ず退職後の行為も対象とした個別の契約書を取り交わしておくことが重要です。契約書を取り交わす時期に関していうと、いざ問題が発覚して従業員が退職しようとする場面で秘密保持の合意を求めても、従業員から拒否されるケースが少なくありません。そうなると、入社時点で、退職後を見据えて合意書を取り交わしておくことが有用といえるでしょう。

ところで、会社としては、従業員に対して、秘密保持だけでなく競業行為禁止を求めることもよくあります。このとき気をつけなければならないのが、競業禁止行為が無制限に認められるわけではなく、①制限する期間、②制限する地域的範囲、③制限する職種、④代償措置という要素を意識して、合理的範囲内で設定しなければならないという点です。一般に、期間としては2~3年、場所としては営業エリアが重なる範囲となります。そして、とりわけ注意することとして、会社在籍時の手当の支給や退職金の上乗せといった代償措置の存在です。先日、私が担当した裁判でも、この代償措置が不十分として会社が取り交わした競業禁止契約が無効とされた事案がありました。

この他にも、社内で秘密管理規定や管理シートなどを作成して営業秘密を厳重に保護している会社もあります。前回も述べたように、ひとたび営業秘密が流出してしまうと、損害の回復を求めるにはかなりの労力が必要となります。したがって、まずは身近にいる従業員からの漏洩を防ぐべく、就業規則や個別契約をしっかりと整えて、抑止力を働かせることが重要な作業となるのです。

 

弁護士 市村陽平

 


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