ご相談事例

個人情報流出に伴う賠償額について(3)


ベネッセコーポレーション事件の東京地裁2月27日判決では、同社に対して被害に遭った顧客一人あたりに賠償金として3300円(うち300円は弁護士費用)を支払うよう命じました。弁護士費用を除いた賠償金3000円は精神的損害を回復する慰謝料と位置付けられますが、一人あたり3000円という金額は適当なのでしょうか。

正直なところ、慰謝料というのは裁判所が事案の性質を考慮して裁量的見地から決断する性質の強い賠償金なので、どの程度の賠償が適切なのか判断しにくいのが実情です。過去には同じように個人情報が流出した事案で一人あたり5000円や30000円の損害賠償が認められた事案もありましたが、それらは思想や政治信条に関わる情報であったりエステティックという身体的・美的感性に基づく情報が流出したことから、本件よりも高額になったものと考えられます。他にも、情報が流出したことにより実際に恐喝未遂という犯罪に用いられた事案でも5000円の慰謝料が認められました。

そうした事案と比較して、本件では、もともと必要に応じて第三者に開示されることが想定される性質の情報であったため、3000円という金額に落ち着いたのかもしれません。なお、本件訴訟より前に言い渡されたベネッセコーポレーション事件判決でも慰謝料は3000円とされていることから、今後、同種事案では3000円という金額が目安の金額になってくることが予想されます。

 

弁護士 市村陽平


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