先日末に中小企業庁から、中小M&Aガイドラインの改定資料が公表されました。前回の改定以降も、しつこい営業活動や不明瞭な手数料設定という仲介者側の問題行動が後を絶たないことに加えて、悪質な買手による買収トラブルが多発し社会問題となっていたことも重なって、その内容が注目されています。
主な改定内容としては、仲介者の手数料や提供業務に関する説明義務の明確化、利益相反行為に関する禁止事項の明確化などがありますが、今回の改正の目玉としては、譲渡側の経営者保証についての取扱い事項と不適切な業者の排除に向けた調査・情報共有といった点ではないでしょうか。とりわけ、企業を譲渡する側の経営者にとっては、会社の預金や債権等の資産をすべて買手に渡した後も、金融機関に対する自らの経営者保証だけは解除されないといった事態を確実に回避する必要性は大きいといえます。そのための指針として、仲介者や譲り受け側だけでなく、金融機関に対しても経営者保証ガイドラインに則した適切な対応を明記したことも見逃せません。
今後、M&Aをサポートする仲介者等の支援機関は、令和6年12月までに第3版遵守のための対応を完了した上で、第3版の遵守宣言が必要となります。指針の内容がしっかりと実行されるよう今後も注視していきたいと考えております。
弁護士 市村陽平