債務超過に陥っている場合、最初に検討される一般的な手続としては破産手続が頭に浮かんでくるかと思います。破産手続は、裁判所の管理下で財産の換価処分や配当が実施される手続であり、破産決定後は裁判所によって選任された破産管財人が中心的となって手続を担っていきますので、会社代表者が主体的に手続に関与していくことは基本的にありません。
ただ、世間一般での「破産」というイメージや、それなりに高額の費用を裁判所に納めなければいけないことから、これらのデメリットを回避してもう少しだけ会社を軟着陸させたいときには、特別清算という手続を利用することも検討されます。特別清算は、破産と同じく、裁判所の管理下に置かれますが、財産の処分等は裁判所が選任する管財人ではなく、会社が選任した清算人(通常は代表取締役)が担うことになり、その分だけコストが抑えられます。
もっとも、特別清算の使い勝手の悪い点としては、まず株式会社でなければならないこと(有限会社のままでは申立てができず、個人事業主も対象外です)、公租公課や労働債権などの優先債権を弁済できる余力があることが前提となる点です。特に後者の要件をクリアするには危機的状況に陥る前に余裕をもった対応が必要となります。また、特別清算は、法人だけの手続であり、例えば会社の債務の保証人となっている代表者などは利用できないことから、代表者はこれとは別に何らかの債務整理をしていかなければならないことも利用を妨げる要因といえます。
次は、今回紹介した裁判所を通じた手続以外の廃業手続についても説明していきたいと思います。
弁護士 市村陽平