ご相談事例

就業規則と懲戒処分について


これまでいろいろな会社の就業規則をみてきましたが、その中には懲戒事由に関する規定はあるものの、懲戒手続についての定めが抜けているという規則も珍しくありません。先日も、会社の経費を不正に支出した社員に対して懲戒処分をしたいという相談を受けた際、経費の不正支出は懲戒事由に該当すると就業規則に書かれているから直ちに処分を言い渡しても問題ないですよね、と問い合わせを受けたことがありました。

この点に関し、たまに誤解している会社もあるのですが、懲戒処分をするにあたり就業規則に手続的なことが書かれていないからといって、何もしなくてもいいということではありません。労働法の理解では、懲戒という従業員への不利益処分をする場合、就業規則に書かれていないとしても、弁明機会の付与や書面による懲戒事由・処分内容の通知、さらには賞罰委員会の開催といった基本的な手続を踏まなければならないと考えられています。手続面での適性が疑われると後に懲戒処分の有効性が争われるリスクもあるのです。

このことは、たとえ従業員本人が不正を認めて、会社の処分を受け入れますと発言していたとしても、コンプライアンスの観点から手続を怠らずに実施すべきといえます。また、懲戒事例が積み重なるにつれ、前例との比較において処分の相当性も考慮する必要が出てくるため、しっかりと社内記録に残しておくことも有用といえるでしょう。

 

弁護士 市村陽平


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