マッチングアプリを通じて求人に申込みをしたものの、直前に店側からキャンセルされたため未払い賃金の支払いを求めて提訴したという裁判で、神奈川簡易裁判所は原告の請求を認めて店側に未払い賃金の支払いを命じたようです(R8.1.31日経朝刊)。
法律的な論点として整理すると、労働契約の成立時期の問題と位置付けられており、①労働者側が主張する仲介アプリを通じてマッチングが成立した時点なのか、②店側(及び仲介アプリの規約)が主張する出勤時にQRコードを読み込んだ時点なのかという点が問題となっていました。
同じような訴訟で、昨年12月にも判決が言い渡されたていたのですが、そのとき店側は裁判に応答せず欠席判決により労働者側の言い分がそのまま認めていたようで、今回の裁判でも店側は未払い賃金額については争っていたものの労働契約の成立時期については積極的に争っていなかったとのことです。
また、現在では、厚労省がスポットワークの直前キャンセルする場合には休業手当を支払うべきとの見解を周知していることを受けて、仲介アプリ側も規約を変更してこれまでの対応を改める対策を打ち出しており、法律上の論点としては、これ以上の広がりを見せないかもしれません。他方で、まだ3年の消滅時効にかかっていない請求権の総額としては200億円程度とも試算されており、万が一、過去に遡って清算しなければならないとすると、それなりに社会全体に及ぼす影響がありそうです。
弁護士 市村陽平