労働法の分野でセクハラ訴訟という類型は枚挙に暇がありませんが、「○○ちゃん」との呼称で女子社員に話しかけていたという事案で、精神的苦痛に対する慰謝料が認められた裁判例があります(東京地裁令和7年10月23日判決)。
この裁判の判決文では「業務上においてこのような呼称を用いる必要性は直ちには見出し難い」とした上で、「親しみを込めて上記の呼称を用いていたとしても、原告と被告の年齢や性別、本件営業所に勤務する従業員同士にすぎないという両者の関係性等に照らすと、原告を「ちゃん」付けで呼ぶことは原告に不快感を与えるものであったといえる。」と判示しています。
現代社会におけるセクハラに対する一般感覚からすると、判決の結論は当然と言えば当然なのかもしれません。この事案で教訓とすべきは、ちゃん付けで呼んでいた当事者たる男性従業員が訴えられただけでなく、共同被告として会社も使用者責任や安全配慮義務違反を理由として訴えられているという点です(会社側は訴訟の途中で和解をしたため判決が言い渡されることはありませんでした)。
今後、もしも社内でこの事案で従業員がしたような発言内容を見聞きしたとき、会社組織としては直ちに発言を諫めたり、それでも収まらなかったときには懲戒処分の検討もした方がよさそうです。
弁護士 市村陽平