ご相談事例

解雇準備としての降格と賃金減額処分について


企業が従業員の能力不足や成績不良を理由に通常解雇を検討しているというときに、ワンクッション挟む目的で、降格処分や賃金減額処分をした方がよいか相談されることがあります。

確かに、降格や賃金減額は、従業員にとって解雇よりもダメージが少なく、企業の解雇回避努力という意味でも検討に値する処分だと思います。しかしながら、解雇よりも処分が軽いからと言って、使用者の一存でできるかというと、必ずしもそういうわけではありません。というのも、一般に、降格については、①人事制度の一環として企業内での役職や職位を下げるだけの措置と、②雇用契約の内容となる職能資格制度や職務等級制度の資格等級を下げる措置の二種類に区分され、①については、使用者の人事権に基づく裁量判断によって比較的自由に行使できますが、②については、就業規則等によって制度上の降格権限が明確に設定されていることが必要とされています。また、賃金減額についても、通常、賃金は職能資格や職能等級に紐付いていますので、争いになった場合には就業規則の記載内容や合理性が厳格に審査されることになります。

日ごろ、企業の就業規則を見ていて感じるのが、懲戒処分としての解雇、降格、減給などは明確に記載されているものの、能力不足や成績不良など会社が必要と認める事由によって降格等の処分をするための規定がおろそかになっているということです。この点がしっかりと認識されていないと、解雇回避のためにとった措置自体が紛争の対象となって、目的にたどり着く前段階の処分が無効と判断されかねません。

他にも通常解雇の準備段階としては、指導・教育、退職勧奨も活用すべきであり、これらの措置を適切に組み合わせることによって、解雇権の濫用と認定されないよう慎重に手続を進めていく必要があります。

 

弁護士 市村陽平


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