ご相談事例

精神的不調が疑われる社員への対応について


コロナの影響なのかわかりませんが、企業から、メンタルヘルスなどの精神的不調が疑われる社員への対応についての相談や依頼を受ける機会が増えてきています。社員がメンタルヘルスを訴えて休職した場合、一定期間欠勤が続いたときには解雇や自然退職とするケースが多く見られますが、近年の裁判例の傾向からすると、会社側が何らの措置をとることなく一方的に解雇や退職処分とすることは少し危険な対応といえます。

平成24年の最高裁判例では、会社側に求められる対応として、①専門医(精神科医等)による受診、②治療の勧告、③休職命令、④経過観察などが挙げられており、これらの措置をとることなく、会社が下した諭旨退職処分を無効と判断しています。もっとも、会社として、いつまでもこのような処遇を続けるわけにもいきませんので、一定の期間を区切った上で、本人との面談や専門医の意見を聴きながら就労可能性を慎重に検討し、本人から休職事由消滅の証明書と復職願が提出された時点で職場復帰を認め、提出されなければ退職という対応になると思われます。そして、休職事由の消滅に関しては、社員の主治医の診断書だけでなく、会社の産業医等が指定する専門医の証明を条件にしておくとよいでしょう。

ただ、その前提として、そもそも会社が社員に対して、会社が指定する専門医への診察を義務付けたり、休職を命じたりできなければ元も子もありませんので、そこは事前に就業規則をしっかりと整備しておく必要があります。また、専門医の診断結果を会社に提供してもらうための同意書も取り付けておく必要もありますので、いざ問題が発生したときに後手後手の対応とならないよう、あらかじめひな形や書式を準備しておくことをお勧めします。

 

弁護士 市村陽平


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