ご相談事例

無期転換後に適用される就業規則について


労働法の世界で一躍有名となったハマキョウレックスという会社ですが、今度は、有期契約から無期転換権を行使した従業員との関係で興味深い判決が示されました(大阪地裁令和2年11月25日判決)。

労契法18条1項では、有期労働契約の契約期間が通算5年を超えると、労働者は使用者に対して期間の定めのない労働契約の締結を申し込むことができ、この申込みがされた場合、使用者は承諾したものとみなされます。もっとも、ここで注意が必要なのは、無期転換権を行使して期間の定めのない契約になったとしても、それが直ちに「正社員」になるわけではなく、期間の定めのない「非正社員」ということも当然に予定されています。すなわち、労契法18条は、有期から無期という期間の定めの変更だけを規定しているのであり、その他の労働条件については、基本的に変更前と同一の労働条件を引き継ぐものとされているのです。

冒頭紹介した新たなハマキョウレックス事件では、無期転換権を行使した元有期労働者が、無期転換後の労働条件については正社員就業規則が適用される(そのような合意が存在する)と主張しましたが、会社としては従前からの労使交渉でそのような回答をしていないこと、正社員就業規則とは別に無期転換後の労働条件を記載した契約社員就業規則が用意されていることなど反論し、結論として、裁判所は労働者側の請求を認めませんでした。

ただ、判決で気になるのは、無期転換後の契約社員の労働条件と正社員の労働条件とを比較し、「両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じた均衡が保たれている限り、労働法7条の合理性の要件を満たしているということができる」と判示している部分です。法律上及び実務上、これまでは有期と無期との待遇差が不合理かどうか争いになっていましたが、この判示内容を見る限り、今後は、無期と無期の労働条件の相違についても不合理性を審査する道が開かれたのかもしれません。

 

弁護士 市村陽平


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