ご相談事例

解雇の金銭解決制度について


厚生労働省の専門家検討会が、4月12日に解雇の金銭解決制度についての報告書を決定し公表しました。報告書によると、制度の骨格としては「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求により、使用者が一定の金銭(労働契約解消金)を支払い、当該支払いによって労働契約が終了する仕組み」としています。

細かな法的性質や権利行使の方法については、今後さらに議論が進められることになると思われますが、現時点では、「労働者の請求」があってはじめて発生する権利と位置付けるようです。換言すれば、使用者側からの一方的な金銭解決は想定されていません。現在の裁判や労働審判でも、解雇が無効であると主張する労働者が、職場復帰を希望することは極めて稀であり、事件のほとんどが金銭(解決金)の支払いで終了している現実があることからすると、仕組みの創設自体に目新しさは感じられません。

むしろ今後の注目は、この労働契約解消金の算定方法や考慮要素になるのではないでしょうか。報告書ではこれらの内容について「政策的に判断する必要がある」としており、今後は労働政策審議会の場で引き続き検討することが予定されています。夫婦が離婚した際の子の養育費や、交通事故の慰謝料などのようにある程度基準が固定化され、制度が安定的に運用されるようになれば、これまで長期化していた裁判手続の短縮が見込めます。労使双方にとって、使い勝手のいい制度になることを期待しています。

 

弁護士 市村陽平


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