ご相談事例

試用期間満了時の本採用拒否について


少し前になりますが、ある会社から、試用期間を設けて中途採用した管理職候補をやめさせたいという依頼がありました。その後、試用期間が終わるまでのスケジュールを組み立て約3か月にわたり継続的に対応した結果、試用期間満了時に雇用契約の終了を実現することができました。

世間一般では、試用期間中であれば雇い入れた社員を自由にやめさせることができると考えられていることも少なくないようですが、裁判等で争われた場合にはそう簡単にやめさせることはできません。すなわち、試用期間中であっても雇用契約が成立していることに変わりはなく、法的には「解約留保権利」の特約のついた雇用契約であると理解されています。そして、解約留保権を行使して雇用契約を解消するには、「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認される場合」でなければ認められないのです。

今回、私が対応した事案は、会社側が具体的な職務経験や能力を提示して求人を出していたにもかかわらず、それに応募して採用された従業員はまったく条件を満たさなかった上に、履歴書には経歴詐称が複数見つかるような悪質ともいえる案件でした。それでも、上記判断基準があることから慎重に対応することとし、職務経験に応じた技能を有しているかどうかの確認、経営幹部を前にしたプレゼンテーション等を何度か実施し、その都度、5段階評価に基づいた客観的な点数をつけるよう経営幹部に助言し準備を重ねてきました。最終的には、本人も認めざるを得ない客観的な評価書ができあがり、それをもとに試用期間満了の30日前に本採用拒否(解雇)通知を示した時点で、本人が自主退職を選択したようです。

この件では、試用期間6か月と定めていたところ、依頼を受けた時点で残り約3か月以上の期間があったことから比較的余裕を持って準備を進めることができました。しかし、試用期間満了まで1か月をきっている事案や、すでに試用期間が経過している事案では会社の選択肢がどんどん狭まってしまうため、早めの対策を講じるに超したことはありません。

 

弁護士 市村陽平


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