ご相談事例

ウーバー配達員の労働者性について


東京都労働委員会が今月25日に、ウーバーイーツ配達員について労働組合法上の労働者と認める判断を示して注目を集めました。すでに配達員らの間で結成されたウーバーイーツユニオンが会社側に対して団体交渉を申し入れており、今回の労働委員会の命令に不服申立等をしなければ会社側としては団交応諾義務を負うことになります。

近年、ギグワーカーと呼ばれる働き手に対しては、最低賃金の補償や雇用保険を適用すべきだという問題意識と、労働組合を結成して団体交渉権を認めるべきだという問題意識が併存してきました。新聞などメディアでは「ウーバー配達員は「労働者」」(R4.11.26朝日朝刊)と見出しを付けていますが、今回の都労委の判断は労働組合法の適用に関する後者の判断で、前者については労働基準法や労働契約法の壁を乗り越えるか、新法を制定しなければおそらく解決できない問題だと位置付けられます。

平成10年代後半以降、配送業務従事者やコンビニエンスストア店長など労組法上の労働者性が肯定される事案が増加しており、①事業組織への組込み、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性ないし対価類似性という3要素が備わっていれば、④業務依頼に対する諾否の自由が認められていることや⑤時間的・場所的拘束等がない場合でも、労働者性を肯定する判断枠組みが確立されつつあるのではないかと指摘されているところです。

私個人としては、今回の都労委の結論はある程度想定していましたが、この先、労組法上の労働者概念がますます拡大していけば、液状化現象によって、労基法・労契法の労働者の解釈にも影響を及ぼすのではないかと危惧しています。

 

弁護士 市村陽平


お気軽にご相談ください。
TEL 0564-26-6222
平日 9:00~18:00(土日祝休) ※事前のご予約で時間外も承ります。