ご相談事例

賃上げ政策コンテスト(内閣府開催)


内閣府が全職員向けに開催した「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」(賃上げ政策コンテスト)で、優勝アイデアとして表彰された内容が波紋を広げているようです。

その政策は「残業から副業へ。すべての会社員を個人事業主にする。」とのアイデア名で、取り組みの柱としては、従業員の残業を禁止し、定時以降は個人事業主として残業相当分の業務を会社から受託するというもの。この取り組みによって、サービス残業が削減され約40万円の年収アップにつながり、未消化分の有給休暇を受託した業務の遂行に充てた場合さらに約20万円の年収アップにつながるとのシミュレーションがなされています。また、企業側としても、社会保険料などのコスト削減が達成され、約15%もの増益につながるとの説明もあります。

このように企業・従業員ともにWin-Winとなるアイデアなのですが、一部メディアでは「「脱法」になりかねぬ提案」と評して、「労働問題に詳しい弁護士」による「お互いを支え合う社会保険料の性格を無視している。このようなアイデアを表彰するとは、あきれてしまう」とのコメントまで掲載して批判しています(R6.7.12朝日朝刊)。しかし、このような意見を読んでしまうと、この立場の人たちはいったい誰の味方なんだろう(財務省?厚労省?)という素朴な疑問がわいてきます。昨今の働き方改革の中では、副業解禁が浸透してきており、労働者側の弁護士も、就業規則等で副業禁止を規定してがんじがらめに従業員を縛り付ける対応を批判してきたはずです。また、従業員の意に沿わない長時間残業の是正も主張していたように思います。これらを解消しようとする提案を批判して、果たして本来の目的とする賃上げを達成できるのか。

最後に提案者の問題意識として掲げられていたのが「累進徴収の所得税、社会保険料(働けど我が暮らし楽にならず)」の一文。すでに企業も従業員も皆気がついています、賃上げを邪魔するのは誰なのかということを。

 

弁護士 市村陽平

 


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