ご相談事例

遺言と民事信託について


遺言と同様の役割を果たす制度として民事信託があります。

遺言の場合、遺言者は受遺者を指定できますが、受遺者が遺産を承継した後、どのように遺産を管理処分するかということまで拘束できるものではありません。他方で、民事信託を利用すれば、一定の期間制限はあるものの、当初受益者死亡後も第二次、第三次という形で受益者を設定して、最終的に財産を承継させる権利帰属者を決めることができます。

以前に私が経験した事案では、高齢の母親が、知的障害のある子(推定相続人なし)に対して、同人が生存する間は遺産を活用して生活し欲しいが、亡くなった後は、実家の跡をとった兄の家系とお世話になった福祉施設に寄贈したいと望んでいる方がいました。このような事案では、遺言によって最初から兄の親族等に遺贈されれば子が母の遺産を受益できなくなりますし、そうかといって子が母親の遺産を相続してしまうと、子には遺言を書く能力がないため、子が亡くなった際に、残された財産は、基本的に国庫帰属されてしまいます。

そこで、民事信託を利用すべく準備を進めることにしたのですが、その最中、母親が亡くなってしまったため、結果的に母親の希望が実現することはありませんでした。世間ではまだまだ民事信託の認知度は低く、このとき私が財産管理のために利用を検討していた金融機関も、前例がないとして口座開設すら受け付けてもらえませんでした。それでも民事信託は、硬直的な後見制度や遺言では対応できない柔軟な財産活用を達成できる利用価値の高い制度だと考えられますので、今後も、民事信託に理解のある金融機関と連携するなどして活路を見いだしていきたいと思います。

 

弁護士 市村陽平


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