判断能力が衰えた両親の預貯金を同居している息子夫婦が使い込んでいるのではないかという類の相談や事件を何度か経験してきました。両親が生存中に発覚すれば、調査はしやすいのですが、亡くなってからだと本当に息子夫婦が出金して使い込んだのか確証を得るのが困難です。特にATMから出金されている場合には、窓口での払戻しと違って筆跡も残りませんし、金融機関が防犯カメラの映像を開示してくれるわけもないので誰が引き出したのかわかりません。
この種の使途不明金をめぐる紛争では、上記のように誰が引き出したのかという争点の他に、引き出したことは認めるけど贈与を受けたという反論や、引き出したことは認めるけど本人のために使ったという反論が展開されることがあり、裁判になるとかなり長引く傾向にあります。弊所では現在、裁判所に使途不明金の返還請求訴訟が、攻撃側と防御側と各1件係属しているのですが、争点がほぼ同じであり、一方の事件で主張した法律論を他方の事件でそのまま自分が受けるという関係に立っています。しかも担当裁判官まで同じで、期日が開かれるペースも近いため、多少やりづらいところですが、両方の事件でいい結果を残せるように説得力ある主張を心がけたいと思います。
弁護士 市村陽平