先月、東京都で建物明渡し執行の最中に、債権者の関係者と執行官が刺殺されるという痛ましい事件がありました。また、数日前には刈谷市でも建物明渡しの執行が行われる直前に、債務者が自室に放火し建物を全焼させるという事件が発生しています。いずれも賃料滞納が原因だったようです。
私も今でこそ明渡しの現場に行く機会は少なくなりましたが、勤務弁護士をしていた頃は、年間10件ほど債権者の代理人として執行に立ち会っていました。預貯金の差押えのように、基本的に書面だけで権利が実現できる強制執行とは違って、不動産の明渡しの場合、債務者が判決に基づき任意に退去しなければ、実力をもって明渡しの断行に踏み切らざるを得ません。そのような場面で、追い込まれた人間がどのような行動に出るのか、私もさまざまな経験をしてきました。
今でも印象深いのが、家にあった仏壇を持って行ける転居先がないから死んでも動かないと言って抵抗したお婆さん(こちらで仏壇が運べる転居先を見つけて解決)、そんなに出て行かせたいなら俺を殺してからやってくれと言って包丁を投げつけてきた中年独身男性(数日後に別件の殺人未遂で逮捕)、天井の高さまでゴミと汚物で溢れかえった室内で猫10匹(あとネズミとゴキブリも多数)と暮らしていた若夫婦(このとき臭気は目からも襲ってくるということを始めて知りました)など。
いろんな困難な場面でも、執行官が立ち会って一緒に債務者を説得してくれていたおかげで乗り切ることができました。その執行官が現場で危険な目に遭う事件が頻発している状況は本当に悲しいです。