ご相談事例

動産譲渡担保の目的物の特定について


先日、動産譲渡担保契約の目的物について、対象が特定され対抗要件を備えているのかどうか判断に迷うケースがありました。

動産譲渡担保契約が締結される場合、通常、目的物は引き続き担保権設定者(債務者)が使用することになるため、登記がされない場合は、占有改定という引渡し方法により対抗要件を具備することが一般的です。しかし、この占有改定という引渡し方法は、債務者から債権者へと現実に占有が移転するわけではなく、明確に公示されているわけでもないことから、外部から譲渡担保の目的物を判別することは困難と言えます。そこで、後々紛争にならないように、譲渡担保契約を締結する際には、契約書の目録に、①種類(名称)、②特質(型番・品番)、③備考(所在地、製造会社)を明記することによって、目的物を特定することになります。

ところが、私が経験した事案では、目的物が複数あるにもかかわらず、契約書の目録には、種類と目的物が存在する場所しか書かれていませんでした。確かに、在庫商品など、目的物の内容が日々変動する動産の場合は、目的物の保管場所のみの記載によって特定せざるを得ないこともありますが、今回の事案は目的物には流動性はまったくありません。さて、このまま譲渡担保権者(債権者)の主張を認めてよいものかどうか。

幸いにして、債権者と債務者の認識が一致しており、かつ、即時取得など第三者の利害が関係することもなかったため、債権者との話し合いにより一定金額支払うことで解決できましたが、裁判となっていたら対抗要件についてどのように判断されたか興味深い事案でした。と同時に、もし私が譲渡担保権者の代理人になったときには、占有改定の方法により対抗要件を備えることは危険なので、しっかりと譲渡担保登記をしなければと再認識した事案となりました。

 

弁護士 市村陽平


お気軽にご相談ください。
TEL 0564-26-6222
平日 9:00~18:00(土日祝休) ※事前のご予約で時間外も承ります。