ご相談事例

心理的瑕疵の取扱いに関するガイドラインについて


国土交通省は、5月20日に「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」を公表しました。これまで、不動産の売買や賃貸借において、過去に当該物件で自殺や他殺が発生した場合に、不動産取引業者に対してどの程度の告知義務を負わせるのか明確な規定がありませんでした。下級審レベルでの裁判例はいくつかありましたが、一般化できるような判断内容ではなく、われわれが相談を受けても判断に迷うことも多々ありました。

今回のガイドライン案を確認して、要点をまとめるとすると次の点が重要になるかと思います。①適用対象は居住用不動産(オフィス等の不動産はガイドラインの対象外)、②告げるべき事案は、他殺・自死・事故死で、老衰や病死による自然死は含まない(ただし、長期間にわたって人知れず放置されたことで特殊清掃が行われた場合は告げる必要がある)、③宅地建物取引業者の義務として、売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みをしたり、インターネットサイトを自発的に調査する義務までは課されない、④告げるべき規範としては、事案の発生時期、場所及び死因で足り、氏名、年齢、家族構成等のプライバシー情報は告げるべきではない、⑤期間としては、事故発生から概ね3年間とする、といったあたりがポイントになりそうです。

私も以前に、物件所有者からの依頼で、アパートの一室で焼身自殺をした入居者の遺族に対して逸失利益等を請求する裁判をしたことがあり、そのケースでは、心理的瑕疵が当該部屋のみに限られるのか、周辺の部屋まで対象となるのかが争われました。結果として、和解で解決したので、裁判所の判断は示されませんでしたが、今回のガイドライン案でもそのあたりまでは明確に触れられておらず、引き続き判断がわかれる問題になりそうです。

 

弁護士 市村陽平


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