ご相談事例

所有者不明土地問題に関連した民法改正(1)


所有者不明土地の増加が社会問題となり、2017年頃から法改正に向けて見直し作業が進められていた中で、本年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)が成立し、公布されました。これらの立法は、基本的に所有者不明土地の発生防止や解消を目的としていますが、同時に、土地の利用や承継に関する現行民法の規定が現代の社会情勢にそぐわなくなってきていることに照らし、現行民法規定の①相隣関係、②共有関係、③財産管理制度、④相続制度(遺産分割)といった部分にも手を加えて、法改正が実現されることになりました。

先般行われた債権法改正や相続法の改正に比べると、やや地味な印象を受けますが、相隣・共有関係は実務でよく相談を受けますし、財産管理制度は、近年、申立件数が伸びてきていますので、この機会に改正法のポイントを押さえておこうと思います。そんなわけで、第1回目は相隣関係の改正点をみていきます。

相隣関係の改正部分は、①隣地使用権の規律の整理、②ライフラインの設備設置権等の規律の整理、③越境した竹木の枝の切り取りを認める規律の整備という3点です。その中でも、隣地に越境した竹木の枝の件はたびたび相談を受ける問題で、迅速な解決手段がなく頭を抱えていた問題のひとつです。というのも、これまでは枝と根とは異なる取扱いが規定されていて、越境した根は自ら切り取ることができるのですが、枝については所有者に切除させなければ権利を実現できませんでした。今回の改正では、枝についても、所有者に切除するよう催告したが相当期間内に切除しないときや、竹木の所有者をしることができないとき、急迫の事情があるときには、越境された側で自ら枝を切り取ることができるようになりました。

何で越境された側なのに自分で手間と費用をかけて切除しなければいけないのかと思うかもしれませんが、これまではそれすらできなかったのです。つまり、相手が要請に応じない場合に、竹木の枝の切除をしようとすると、土地の所有者相手に裁判を起こして判決を取得し、判決に基づき強制執行を申し立てなければ実現できませんでした。このような使い勝手の悪い法制度と比べれば、今回の改正も一歩前進と評価できるのではないでしょうか。

 

弁護士 市村陽平


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