ご相談事例

経営者保証ガイドラインの積極活用について


収束が見通せない新型コロナウイスルの影響で、中小企業の廃業リスクが高まってきています。中小企業では、金融機関から融資を受ける際、経営者やその家族も保証を求められることが通常でした。この弊害を見直し、無保証融資を促進するために、平成26年月2月から経営者保証ガイドラインの運用が始まっており、昨年12月には事業承継時に焦点を当てた経営者保証ガイドラインの特則も公表されています。

今回のコロナ禍で、中小企業の経営者が廃業や事業承継をする場合でも、これらのガイドラインを活用して早い段階で金融機関と交渉すれば、不利益を回避できる可能性が高まります。すなわち、ガイドラインの適用を早期に申し出れば、債務超過により会社が破産せざるを得なくなった場合でも、経営者が一定期間の生活費や華美でない自宅を残す形で破産を回避できるようになりますし、後継者が見つかって事業承継する場合には、保証の二重徴収禁止の観点から、従前経営者の個人保証が解除されることも考えられます。

実際に中小企業庁が公表している政府系金融機関における経営者保証ガイドラインの活用実績によれば、令和元年度に経営者との保証契約を解除した件数が3155件あり、平成29年度の2853件、平成30年度の2674件から件数を増やしています。また、事業承継を含めた代表者の交代時における対応としても、旧経営者との保証契約を解除する一方、新経営者との保証契約をした件数が5230件、旧経営者との保証契約は解除しなかったが、新経営者との保証契約は締結しなかった件数が4371件あり、政府系金融機関では着実にガイドラインの運用が浸透している形跡がうかがわれます。

この経営者保証ガイドラインの履行について、金融庁は、すべての金融機関に対してガイドラインに応じた実務の取り組みを求めており、取組がみ不足する場合には業務改善命令を発出することまで言及していますので、これは政府系金融機関に限らず契約者からの相談があれば対応しなければなりません。近時の民法改正による保証制度の見直しもあったように、会社の破産=経営者の破産とならない仕組みが整備されてきていますので、これらの仕組みの積極活用して被害を最小限に抑える対応が望まれます。

 

弁護士 市村陽平


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