ご相談事例

交通事故紛争解決センターについて


先週、交通事故紛争解決センター(通称「紛セン」)を利用して事件が解決しました。私の場合、交通事故に関係する事件は、基本的に示談で話がまとまることが多く、紛争解決機関を使うことはあまり多くありません。それでも、平均して年に2、3件は裁判所に訴訟提起することもあるのですが、これまでなかなか交通事故紛争解決センターを積極利用したことはありませんでした。一番大きな理由としては、この辺りだと名古屋にしかセンターがなく、期日の度、名古屋まで出向かなければいけないからです。また、交通事故を原因とする損害賠償請求の場合、過失割合や損害額が定形化していて、裁判所でも比較的スムーズに訴訟が進行して解決の見通しが立ちやすい(裁判官によるブレが少ない)という理由もあります。

今回、約10年ぶりに紛センを利用しましたが、従来と運用が大きく変わり(コロナ禍の影響なのかもしれません)、仲裁人と電話での話し合いができるようになり、わざわざ名古屋まで出向かなくてもよくなったことに大きなメリットを感じました。また、以前利用したときは、まだ意見の隔たりが大きい状況の中で、見切り発車的に仲裁案を提示されましたが、今回は仲裁人が粘り強く当事者双方の話をしっかりと聴き取り、機が熟した段階で仲裁案を出していただき、満足度の高い解決となりました。

前回、裁判外紛争解決手続(ADR)の話をしましたが、この交通事故紛争解決センターもADRの一種です。裁判所はどうしてもお役所仕事という感じで、形式的な不備も一切許してくれませんが(しかも、口頭での修正は受け付けてもらえず、常に書面による訂正申立ての提出を求められます。)、その点ADRでは柔軟に対応してもららえます。また、裁判所では、和解が成立するときでもその条項を当事者の側で一から作らなければいけませんが、ADRでは専門家である仲裁人に作成してもらえます。今後、さらに裁判所に先んじてデジタル化も採り入れられるようになれば、ますます使い勝手のよい制度となっていくのではないでしょうか。

 

弁護士 市村陽平

 


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