ご相談事例

更新上限条項による雇止め


労働契約法では、平成25年4月1日から、いわゆる無期転換ルール(有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる制度)が施行されており、実際には平成30年4月1日以降に無期転換申込を受けるという状況になっています。

この法改正の前後に、有期契約社員との間で新たに5年を超える契約更新は行わないとする更新上限条項を設定する企業が多く見られましたが、このような更新上限条項に労働者が同意していた場合に、どのような効果が発生するのか整理してみたいと思います。

まず、更新上限条項の存在をもって5年後に当然に雇用契約が終了するとも考えられますが、近時の判例では、これは「雇止めの予告」とみるべきであり、有期労働契約の独立の終了原因にはならないと判断していますので、当然に契約終了と捉えることはできません。その上で、この更新上限条項の存在が、労働者にとっての契約更新に対する期待を大きく減殺する意味をもつかどうかという枠組みで労契法19条2号の該当性について検討することになると思われます。なお、労働者側からは、無期転換の法改正後に更新上限条項を導入したこと自体をもって、公序良俗違反と主張されることもありますが、少なくとも現在の判例ではそのような考え方はとられていませんので、無期転換権発生を阻止する目的で更新上限条項を設定したとしても違法ではありません。

他方で、企業が更新上限条項を設けていた場合でも、この条項の運用が徹底されていなければ、労働者の契約更新に対する期待を減殺できないことになりますので、注意が必要です。実際の例として、6年目以降の契約について過去の業務実績などを評価するとして更新に含みをもたせていた事案では、雇止めが無効とされ無期転換が認められてしまっています。企業の側で有期労働者について長期雇用をするのであれば、この更新上限条項の例外措置という形をとるのではなく、5年を待たずに無期雇用を決断するという方が安全なのではないかと思います。

 

弁護士 市村陽平

 


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