ご相談事例

労働組合との団体交渉(団交拒否と主張された事案)について


私は平均して年に3件程度、労働組合との団体交渉をしています。数か月前まで行われていた団体交渉で、組合側から「団交拒否に該当する!」と激しく主張された事案について紹介したいと思います。

①まず使用者側の交渉担当者について、会社の課長職が同席していたのですが、初回から組合側は「代表者でなければ合意に到達できない」と主張し代表者の出席を強く求めていました。実際、出席した課長職には交渉権限が付与されており、そのことを説明しても組合側は団交拒否、誠実交渉義務違反を繰り返していました。しかし、過去の中労委の判断でも明らかにされているように、交渉担当者は交渉権限を持っている必要はあるものの、交渉の妥結権限や協約締結権限まで有している必要はありません。

②次に、出席人数・開催場所・時間・録音の有無についても条件が一致しませんでした。特に、会社側はコロナ禍での団交開催とあって、人数や時間を絞りたいという考えをもっていました。そして、もし5名を超える参加が見込まれるのであれば、オンライン開催という方法を提案したのですが、組合側はリアル開催にこだわり時間も2時間以内という制限を加えることに強く抵抗し、条件を変更しないのであれば団交拒否に該当するとの姿勢でした。しかし、会社側としては、開催自体を拒んだことは一度もなく開催条件が折り合わなかったというだけです。とりわけコロナ禍で組合側が提示している開催条件は合理性があるといえず、仮に団交拒否と判断されたとしても、会社側の対応は「正当な理由」があると評価されます。

他にも、様々な点で対立があり、交渉の議題に入る前にすったもんだあった事案でしたが、最終的には何とか交渉を終えることができました。昔は団体交渉というと組合員全体の利益向上のための活動のように位置付けられていましたが、ここ最近経験する交渉は、ほとんどが会社を退職した従業員個人の利益に関する問題という印象です。個人的には、労働者にとってもパワハラや残業代の請求であれば、団体交渉するよりも、労働審判手続を選択した方が費用をかけず素早く解決できるような気がしています(余計なお世話かもしれませんが)。

 

弁護士 市村陽平


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