ご相談事例

ハラスメント申告に対する回答を遅延したことが債務不履行と判断された事案


学校法人茶屋四郎記念学園事件(東京地裁令和4年4月7日判決)では、使用者である学校法人に対し「ハラスメントなど従業員の職場環境を侵害する事案が発生した場合、事実関係を調査し、事案に誠実かつ適性に対処し、適切な時期に申告者に報告する義務を負っているというべきである」という判断基準を示し、合理的な理由なく申告から回答を伝えるまでに8か月以上の期間を要したことについて、「合理的理由のない回答遅延は債務不履行を構成する」と結論づけました。

本年4月から完全実施されることになった改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)では、企業は労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられるようになりました(法30条の2)。この改正法施行に伴い、ハラスメントの相談体制を構築している企業も多いと思われますが、同法では、相談・申告から回答までの具体的な期限の設定については言及されていません。本判決も事例判断のひとつではものの、従業員側からの申告に対する使用者側の回答について一歩踏み込んだ判断をしたと思われます。

使用者側にとっては、改正法に基づきパワハラの相談体制を構築しただけでは安心できないことを意味する裁判例として位置付けられるでしょう。

 

弁護士 市村陽平


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