昨年5月に公布され、今年秋頃までに施行される予定の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス保護法)については、①誰に対して義務が課されるのか、②どのような取引に関して適用されるのか、やや複雑な規定となっているため簡単に解説していきます。
まず、①誰に対して義務が課されるかですが、取引の相手であるフリーランスは、個人であって従業員を使用していない者とされています(なお、法人であって代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しない場合も対象とされますが、実生活ではあまり想定されないパターンかと思います)。これに対して、業務を発注する事業者側については、基本的に従業員を使用する業者ということになっていますが、従業員を使用しない事業者についても一部の規定(書面等による取引条件の明示)の適用はあるため、この点は注意が必要です。
次に、②どのような取引に関して本法が適用されるかについてですが、物品の製造・加工、情報成果物の作成や役務の提供を目的とする「業務委託」取引に適用され、物品の売買等の取引には適用されません。
なお、従業員を使用する業務委託事業者と、継続的に業務を受託するフリーランスとの間の取引においては、育児介護と業務の両立に対する配慮やハラスメント対策に係る体制整備の措置も講じる必要があり、違反行為に対しては命令・勧告等の行政処分を受ける可能性もあることから、この点にも注意が必要と思われます。
弁護士 市村陽平