ご相談事例

戸籍に記載されていない実子について


家事事件を取り扱っているといろいろ不思議な経験をします。最近では、真の親子関係が戸籍に反映されていないというケースがありました。

相談者は、高齢の母親の判断能力があるうちに、相続人間である程度平等に遺産が分けられるよう準備をしておきたいという希望があり、ひとまず相続人を把握するために戸籍謄本をとってもらったのですが、実子であるにもかかわらず母親の戸籍に入っておらず、母親の氏名欄も親族の名前になっていたのです。私も最初は、相談者本人の思い違いなのではないかと疑って関係者にも話を聴いたのですが、母親自身も自分の子で間違いないと断言します。詳しく話しを聴いてみると、母親のいとこが子どもを授からなかったので、自分で生んだ子どもをいとこ夫婦の子として届け出たとのことでした。今では考えられませんが、当時は、行政もそのような届出を受理していたようです。

相続人間の関係性も悪くなかったので、当初は、母が他界した後に遺産分割協議で分けたらどうかと思っていましたが、母子のつながりを戸籍で証明できないとなると話しが変わってきます。急きょ、方針を転換して、母親に遺言を残してもらうことにしました。今まで、戸籍が真の身分関係を反映していないという事例を経験したことがなかったので、今回はいい勉強になりました。仮に、遺産分割協議や調停になった場合、戸籍が使えないとなると、どうやって親子関係を証明するのでしょうか。おそらく関係者の供述だけでは足りず、はじめからDNA鑑定までやって証明しなければ申し立てすら受け付けてもらえないような気がします。

 

弁護士 市村陽平


お気軽にご相談ください。
TEL 0564-26-6222
平日 9:00~18:00(土日祝休) ※事前のご予約で時間外も承ります。