これまでに不動産に関する相談を比較的多く受けてきていますが、その中で、定期借家契約の更新はできるのかという質問をよく受けます。私が、杓子定規に「更新はできません」と回答すると多くの大家さんはがっかりするので、すかさず「再契約したらどうですか」と付け加えます。定期借家契約は、期間満了により確定的に契約関係が終了することに意義のある契約であるため、それとは矛盾する「更新」は認められません。もっとも、借地借家法には、再契約を禁止する規定もありませんので、契約自由の原則により、当事者間の合意で再契約することは可能です。
ただし、再契約する場合に厄介となるのは、保証人の問題です。再契約ということは、従前の契約は期間満了により終了となります。そうすると、前契約を主契約とする保証契約も同時に効力を失うことになります。したがって、再契約する場合には、保証人との間で、再度保証契約を締結する必要があると考えられます。従前の保証人が引き続き契約してくれればいいのですが、契約終了を機に、断られてしまうことも多々あります。また、近年改正された民法との関係で、改正後に賃貸借契約の保証をする場合には、極度額の定めが必要となってきます(更新の場合は、必要ないと考えられています)。そのため、更新と再契約は、契約関係の継続という意味では似たような機能をもちますが、完全に同じ効果が期待できるというわけではありません。
この他、賃借人から差し入れられた敷金が差し押さえられている場合に、大家さんは再契約のタイミングで敷金をスライドさせてしまってよいかどうか問題になったこともありましたし、普通借家とは違った賃料増額をめぐる紛争に発展したこともありました。賃貸人にとっては、法定更新のリスクがなく将来的に自由度の高い定期借家ですが、思わぬ落とし穴もあり注意が必要です。
弁護士 市村陽平