ご相談事例

危急時遺言について


遺言の方式については、自筆証書や公正証書が馴染み深いと思いますが、あまり知られていない方式として危急時遺言があります。これは、疾病等の事由によって死亡の危急に迫った際に用いられることがある遺言です。

公正証書で遺言を作成する場合と異なり、3人以上の証人の立ち会いが必要であったり、作成後20日以内に家庭裁判所に対して確認の請求をする必要があるなど特別の方式が民法で規定されています。確認の請求を受けた裁判所は「遺言書が遺言者の真意に出たものであるとの心証」を得た場合でなければ確認をすることができません。近時では、遺言作成の様子を動画撮影して裁判所の判断材料とすることも増えてきています。

ただ、裁判所が確認したからといって、遺言者の真意に合致した遺言であることが確定するわけではないため、後々、訴訟において遺言の有効性が争われるケースもあります。弊所でも先日、危急時遺言でなければ遺言が残せないかもしれない案件がありましたが、将来的な紛争のリスクを避けるため、公証人に病院まで出張してもらい公正証書遺言の形で遺言を作成することにしました。ギリギリの判断でしたが、公証人がしっかりと遺言者の意思を聴き取ってくれたため遺言者の希望通りの遺言を残すことができました。危急時遺言は制度として知っておいて損はないものの、実務では最終手段としての位置付けかと思われます。

 

弁護士 市村陽平


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