ご相談事例

自己株式の積極的活用について


会社は、原則として、株主総会の普通決議により、株式の種類や数、対価として交付する金銭等の総額などを定めて、自己株式を取得することができます(ただし、特定の株主から取得する場合には、特別決議が必要になります)。

一昔前までは、発行済株式総数の適正化や買収防衛を目的として、取得した自己株式を自社で保有し又は消却するという方法が一般的でしたが、近時は、これを役員報酬として付与したり、合併等の組織再編の対価として活用する会社が増えているようです。役員報酬として自己株式を付与するケースでは、表向きには取締役に対して「企業価値及び株主価値の持続的な向上を図るインセンティブを付与する」と説明されますが、実際には、経営陣に譲渡制限を付した自社株を取得させることで敵対的買収に対抗するという意味合いが強いと思われます。役員に株式を割り当てるにしても、当然、対価が必要となりますので、本来、役員は現金等で株式対価の払い込みをしなければなりません。ところが、多くの場合、役員の会社に対する金銭報酬を現物出資するという方法がとられており、しかも、既存の報酬はそのまま受け取らせた上で、既存の報酬とは別枠で新たに報酬債権を付与してこれを現物出資させるという技巧的方法がとられています。

このような方法によって役員に付与された自己株式が最終的にどうなるかというと、多くは、2~3年程度の譲渡制限期間が満了した後、会社が「無償で取得する」とされているので、ますます表向きの説明と実態とが乖離しているのではないかと思えてしまいます。いずれにしても、現経営陣からすると有用な手段、少数派株主からしてみると厄介な活用方法の広がりといえそうです。

 

弁護士 市村陽平

 


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