ご相談事例

取締役の地位不存在確認仮処分事件について


今年の3月に裁判所に申し立てた取締役の地位不存在確認仮処分事件が今週無事に終結しました。仮処分事件は緊急性が高いことから双方の意見を聴き取って1か月程度で判断が下されることが一般的ですが、今回の件は約3か月の間に4回ほど審尋期日を重ねるという異例の展開をたどりました。

事件の内容としては、会社の現経営陣が関与することなく株主側で勝手に招集開催された臨時株主総会で、今まで会社の経営をまったく担ったことがない人物らが一方的に取締役に選任されたとして現経営陣に対して取締役の地位を主張してきたという事案。私は会社(現経営陣)からの依頼を受けて、勝手に招集開催された臨時株主総会決議の有効性(無効ないし不存在)を争いました。仮処分手続でのこの種の事案の着眼点としては、①取締役に選任されたと主張する者についてすでに役員登記が完了しているか、②取締役に選任されたと主張する者が自らの地位を主張するだけでなく現経営陣らの解任まで主張しているかどうかという点が大きく影響します。本件では①については仮処分申立直後に登記が完了してしまい、②について相手方は現経営陣の解任までは主張していませんでした。そのため、裁判所からは仮処分ではなく本案訴訟で時間をかけて解決してはどうかという示唆もありましたが、最終的には仮処分係属中に自称取締役らを解任してこちらの請求を実現することができました。

本件は、会社法の争点の他に、相続法の争点が絡む複雑な事案で、条文と解説書をひもときながら短期間に何度も主張書面や陳述書を提出するという慌ただしい経過をたどった思い出に残る一件となりました。依頼主である会社が今後創業家のお家騒動に巻き込まれることなく安定した環境の中で経営を維持できることを祈念しています。

 

弁護士 市村陽平


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