マンションでの騒音をめぐるトラブルについての相談が増えています。コロナによるステイホームの影響もあるのかもしれませんが、今年に入って3件訴訟や調停を申し立てました。
この種のトラブルでは、まず誰が当事者(原告・申立人)となるのか慎重に見極める必要があります。単に居住者同士の個人間トラブルなのか、マンション全体(管理組合)を巻き込むようなトラブルなのかという点です。前者であればいきなり訴訟提起も可能ですが、後者であれば、総会の招集や弁明の機会の付与、集会決議といった手続が必要となります。違法性の判断基準についても、前者は不法行為(受忍限度論)、後者は共同利益背反という点で主張立証方法が異なってきます。どちらの場合も金銭請求も可能ですが、前者は損害賠償、後者は違約金請求(ただし管理規約に規定がある場合に限る)という構成になることが一般的です。
騒音や悪臭といったトラブルは人によって感じ方が異なり、明確な基準もないため、裁判所での解決が難しい訴訟類型といえます。ただ、経験を重ねることによって、引用できる裁判例の蓄積も増えてきますし、裁判での主張や立証のポイント(勘所)もつかめてきます。現在係属している事件でも、訴訟のヤマ場となる尋問に向けてしっかりと準備を進めていきたいと思います。
弁護士 市村陽平