ご相談事例

所有者不明土地問題に関連した民法改正(3)


現行の財産管理制度としては、「不在者財産管理人」と「相続財産管理人」がありますが、これらの制度は対象者の財産全てを調査・管理しなければならず、申立てをする利用者にとって費用の面で負担が大きいとされてきました。そこで、今回の改正により新たに創設されたのが、「所有者不明土地・建物管理制度」と「管理不全土地・建物管理制度」です。これらの制度の特色は、特定の不動産に特化して管理を行えるという点で、財産管理人制度のようにあらゆる財産の管理・処分は必要とされません。したがって、事前に裁判所に予納する金額も今までよりも低額になると想定されています。

近年、空き家や倒壊の危険性の高い朽廃建物が増加傾向にあり、そのような不動産から被害を受けるおそれのある近隣住民も利害関係人として、本制度の申立権者になり得るとされています。裁判所によって選任された管理人は、「所有者不明」の場合には裁判所の許可を得て建物の売却や取壊しもでますが、「管理不全」の場合には裁判所の許可に加えて所有者の同意も必要となることに注意が必要です。通常問題となるケースでは、所有者が放置しているからこそ管理不全になるわけであって、この場面でも所有者の同意がなければ取壊し等の処分ができないとなると実効性に疑問が生じます。

また、管理人の費用は、法律上の建前では所有者が支払うことになっていますが、申立てをする段階では利害関係人等の申立人が予納金として負担しなければなりません。もし、最終的に所有者からの支払いが担保されないような事案では、申立て自体に二の足を踏むことも予想されます。その意味では、法整備ももちろん重要ですが、自治体等による補助金の整備も同時に充実させていく必要があると思います。

 

弁護士 市村陽平


お気軽にご相談ください。
TEL 0564-26-6222
平日 9:00~18:00(土日祝休) ※事前のご予約で時間外も承ります。