ご相談事例

家賃保証業者による賃借物件の明渡しの実行について(1)


家賃保証業者と適格消費者団体(NPO法人)との裁判についての上告審判決が12月12日に言い渡されるようです。この件は、昨年の3月5日に大阪高裁で控訴審判決が示されたあたりから世間でも注目を集めるようになった事件で、消費者契約法の解釈も絡んで争点は多岐にわたり整理するのが大変な事件なのですが、一番大きな争点としては、契約条項に定める一定の要件が満たされた場合に、家賃保証業者が契約の解除があったとみなして物件内の家財等を搬出して処分することができるのか、という点にあります。

今回の事件の当事者である家賃保証業者が定めた契約条項について、メディア等ではわかりやすく「追い出し条項」などと表現している記事を見かけますが(日経R4.11.15も「「追い出し条項」来月判決」との見出しになっています)、具体的に契約条項を確認すると、○か月賃料の支払いを怠った場合には家財を処分するなどという単純な内容ではなく、条項自体はあくまで賃借人が物件の占有権原を確定的に失い任意の明渡しがあったと認められるかどうかを判断するための要件を提示しているにすぎず、メディアの見出しはやや視点がずれているように思われます。

これまで数多く明渡しの裁判及び強制執行を経験してきましたが、大家さんにとって一番のリスクは家賃を滞納されることよりも、賃借人が行方をくらませた後、その物件の中に立ち入って勝手に荷物を処分することもできず、次に賃貸できないことです。適法な手順を踏んで新たな賃借人との間で賃貸借契約を結ぼうとすると、原則として裁判と強制執行という時間も費用もかかる手続を経なければなりません。近々言い渡される最高裁の判断次第では、契約条項の定め方によっては、このような手間暇を大幅に省略できるようになるかもしれないという意味で、不動産賃貸業界にとって非常に注目を集める裁判となりそうです。

 

弁護士 市村陽平


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