ご相談事例

公益通報者保護法の改正について


本年6月の国会で、公益通報者保護法が改正されました。近年、社会問題となった申告資料を改ざんして貸し出された不動産オーナーへの低利融資や、顧客に不利益となる契約乗換を勧めた保険の不適切な販売などの不祥事案件では、多くの社員が問題意識を共有しながらも内部通報の制度が機能不全に陥っていたため、不正の発覚が遅れることとなったとされています。

今回の改正では、保護の対象となる公益通報主体の拡大(退職者や役員が追加)や、これに関連して不利益取扱いが禁止される範囲の拡充(退職した従業員や役員への退職金不支給の禁止)、事業者から通報者に対する損害賠償請求の禁止などの内容を盛り込むことにより、公益に資する通報の促進を図ろうとしています。この他に、事業者にとって重要な改正点として、公益通報対応業務従事者を定める義務や、公益通報に適切に対応するための体制の整備を構築する義務が新たに定められました。これらの詳しい内容については、今後、指針によって明らかにされますが、従事者としては、経営陣とは一線を画する部門の設置や外部の通報窓口が想定されているようです。また、社内における制度の周知徹底や対応する従事者への教育訓練も必要になってくると考えられます。

事業者の措置義務については、今のところ、常時使用する従業員の数が300人以下の事業者は、努力義務とされていますので、すべての企業が対応しなければならないというわけではありません。他方で、措置義務の対象となる事業者が、義務の履行を怠った場合には、指導、勧告を受けるほか、勧告に従わなかったときには公表される旨の規定が置かれました。私個人の経験でいうと、関与する企業の法令違反行為についての通報は今まで受けた事はありませんが、役員以外の従業員から会社の事業方針について相談を受けるという企業はありますので、今後は、利益相反の確認だけでなく、公益通報者保護という観点も強く意識して相談対応にあたらなければいけないと考えているところです。

 

弁護士 市村陽平


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