ご相談事例

約束手形の廃止について


経済産業省が2026年をめどに紙ベースの約束手形の使用を廃止して、電子手形へ切り替えるよう経済界に対して働きかけているようです(朝日新聞3月22日朝刊)。廃止の議論を進めている理由としては、約束手形を現金化するための期間が平均約100日と長く中小零細企業の負担になっているため、電子化により支払い完了までの期間の大幅な短縮を目指しているとのこと。

私自身、破産管財人として、約束手形を引き継ぐことも多いのですが、確かに破産会社の受取手形を見ると、支払期限が振り出しから90日後というのは普通にあります。電子化を促すことによって、手形サイクルが短くなり、その間の資金繰りが改善されて倒産を防ぐことができるのであれば、よい方向の動きだと思われます。もっとも、世の中に出回る約束手形は年々減少しており、何もしなくても早晩手形自体が自然と使用されなくなるのではないかという気もしています。私も弁護士になりたての頃、手形を紛失した当事者から依頼を受け、裁判で公示催告→除権決定を受けたことが一度だけありましたが、それ以後、破産管財業務で取り扱う以外には、手形事件を受けたことはありません。

まだ学生の頃、手形小切手法は司法試験の受験科目に含まれていたため一生懸命勉強しましたが、そのとき論点となっていた「手形の偽造・変造」とか「裏書きの連続性」といった議論は手形が電子化されることにとよってまったく無意味な争点となってくるのでしょう。手形法の学説は刑法総論と同じく理論面での対立が激しく、個人的には二段階創造説の理屈っぽいところが好きだったので、この機会に久しぶりに当時愛用していた基本書を開いてみたいと思います。

 

弁護士 市村陽平


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