ご相談事例

高年法改正による70歳までの就業確保措置について


昨年3月31日に改正された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)が、来月の4月1日から施行されます。今回の高年法改正により、企業は70歳までの就業確保措置を講じなければならなくなりました(現時点では努力義務なので、罰則等はありません)。

具体的な措置としては、①70歳までの定年引き上げ、②70歳までの継続雇用制度の導入、③定年の廃止、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に従事できる社会貢献制度の導入が定められています。現在は65歳までの雇用確保が企業に義務付けられていますが、多くの企業は定年の引き上げや定年廃止の措置をとることなく、65歳までの継続雇用制度によって対応していますので、おそらく今回の改正でも、多くの企業が基本的には②によって対応するものと考えられます。もっとも、近年の働き方改革やコロナ禍での働き方の変容による影響で、案外④を選択する企業も一定数あるかもしれません。

改正高年法では、労働条件等については従前の条件を引き継ぐという定めにはなっていないことから、最低賃金等の規制にさえ抵触しなければどのような契約内容にするかは企業の裁量に委ねられることになります。したがって、高年従業員との間で労働条件折り合わなかったとしても高年法違反とはなりません。ただ、近年、正規・非正規の均等待遇という要請から、高年者の就労を有期とした場合の待遇差には注意をする必要があります。高年者と同じ仕事をしている正社員や、高年者自身の直近の賃金とあまりにも差があると裁判により不合理と判断される恐れがあります。

この他に、上記④⑤の措置を実施する場合には、あらかじめ過半数労働組合の同意を得て周知しておくことも必要となります。現時点では努力義務ですが、近い将来、法的義務になってくると思われますので、今のうちから整備しておくとよいのではないかと思われます。

 

弁護士 市村陽平


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