普段の業務の中でも、契約書の作成や確認業務は数多くあり、平均して月に10件程度依頼を受けます。先日も顧問先から、取引相手が作成した契約書を確認して欲しいと言われたので目を通してみると、損害賠償の項目の中で、取引相手が支出した調査費用や弁護士費用まで賠償の責任を負うという規定となっていたことから、さすがに訂正してもらうよう慌てて伝えるといったことがありました。
契約書の条項については、多かれ少なかれ自社に有利な内容となるよう作成する場合はあるのですが、弁護士費用まで相手に負担させる内容の契約書はこれまで見てきた中でも異例と言えます。裁判となれば、日本は諸外国とは異なって敗訴者負担ではなく、依頼した弁護士の費用は各自が負担しなければなりません。この扱いを契約書でひっくり返そうとしたと思われるのですが、もし依頼者が内容をよく確認しないまま取り交わしていたら、後々想定していなかった負担を強いられる危険がありました。
その後、今回の件は、依頼者が取引相手に修正を依頼し、問題となる部分は無事に削除されたと報告がありました。世間一般には、契約書を逐一確認するのは面倒とか、どんな契約書も中身はだいたい同じなどと考えがちですが、思いもよらぬ落とし穴が潜んでいるかもしれないので、やはりよくよく注意して確認した方がよいと思います。
弁護士 市村陽平