先月の話題になりますが、取引先に金型を無償で保管させていた会社が下請法で禁止される「不当な経済上の利益の提供要請」に該当するとして公正取引委員会から再発防止勧告を受けたとの記事を目にしました(R6.2.29日経朝刊)。この下請け業者が負担した保管費用は1億円を超える見込みだそうです。
私も顧問先の会社や、管財人に就任した会社などの工場を見に行ったときに、外に大きく積み上がった金型を何度か目撃したことがあります。担当者に尋ねると、業務を発注された会社から貸与された金型で、部品の製造は終了したものの引き取ってくれない金型が積み上がっているのだとか。スペースはとられるし、盗まれないよう監視もしなければならず、やはり負担は相当大きいそうです。以前に破産管財人として取り扱った事案では、約30年前の金型も残されていて、本来の所有者に引き取りを打診すると、「もういらないからそっちで処分して」と返事をされたこともありました。
報道によれば、メーカーが下請け業者にこのような金型の保管や管理を負担させられる事案は後を絶たないそうで、検査官のコメントとして「今後も無償保管を行わせている行為が判明した場合は厳正に対処する」方針のようです。
弁護士 市村陽平