ご相談事例

相続回復請求権と取得時効が問題になった最高裁判例


民法に規定される相続回復請求権と不動産の取得時効をめぐる興味深い最高裁判決がありました(最高裁第三小法廷令和6年3月19日判決)。

相続回復請求権とは、本来は正当に相続権を有する立場の人物(真正相続人)が、相続権を有しない第三者や相続分を超える権利を保持する権利者(表見相続人)に対して権利の回復を請求できるとする権利です。ただ、この権利が原則として相続権を侵害された事実を知ったときから5年間行使しないときは時効により消滅すると定められていることから、個別の財産に対する返還請求件等と比較して、どのような存在意義があるのか学説上では盛んに議論されてきた制度です。

上記判断の事案では、被相続人の死亡後、自ら単独で相続したと認識していた唯一の相続人が10年以上不動産の占有を継続していた(移転登記も済ませていた)ところ、被相続人の死後10年以上経った後に発覚した遺言書で遺贈を受けていたとする受遺者(真正相続人)が、単独で不動産を相続した相続人(表見相続人)に対して相続回復請求権を主張しました。ここでの争点は、原則5年という相続回復請求権の消滅時効が完成する前に不動産の時効取得が成立するのかという問題であり、過去の大審院判例では、このような場合の不動産の時効取得を否定していたのですが、今回の最高裁の判断は、これを覆して不動産の時効取得を認める結論に至ったようです。

これまで実務に携わってきた中で、相続回復請求権を主張したこともされたこともありませんが、頭の片隅には置いておきたいと思います。

 

弁護士 市村陽平


お気軽にご相談ください。
TEL 0564-26-6222
平日 9:00~18:00(土日祝休) ※事前のご予約で時間外も承ります。