M&A仲介のトラブルが相次いで生じているとして、中小企業庁が実態把握に乗り出したようです(R6.5.25朝日朝刊)。
朝日新聞は5月14日からの「けいざい+」の連載で「M&A仲介のワナ」と題して悪質な買手や仲介業者によるトラブル事例を取り上げていました。私も連日興味深く読んでいたのですが、この報道も影響して中小企業庁が動き出したのかもしれません(そういう意味で改めて新聞報道の影響力を実感しました)。
近年、後継者不足を中心とした所謂「黒字倒産」などと呼ばれる廃業が社会問題化しており、これを背景にM&A仲介業者が次々と乱立され営業活動を繰り広げています。そうした中では、売手と買手の両方から依頼を受けて費用を受け取る利益相反リスクが顕在化していて、国もガイドラインなどを通じて一定の指針を設けてきましたが、罰則や是正手段がなく、いよいよ国としても被害を見過ごせなくなってきたようです。
M&Aでは、われわれ弁護士も買手企業側からの依頼でデューデリジェンスに入ることが多くあります。しかし、今回の「M&A仲介のワナ」を読んでいると、悪質な業者から会社の従業員や取引先を守るためには、売手側としても買手の属性を見極めるために調査する必要があるのではないかと感じた次第です。
弁護士 市村陽平