ご相談事例

賃金体系の見直しと不利益変更について(1)


10月13日と15日に、非正規社員の待遇格差の是非をめぐって2件の最高裁判決が言い渡されました(この2件の最高裁判決については、実務的に重要な判断になりますので、後日、自分なりの見解を整理したいと考えています)。また、昨日は、名古屋地裁で、定年後再雇用制度によって働いていた高年者の基本給について、正社員の給与と比較して6割を下回る待遇が不合理である旨の判決が言い渡されました。このように、近時の訴訟の流れをみていくと、福利厚生や施設の利用の待遇差だけでなく、手当→賞与→退職金→基本給というように会社の賃金体系そのものを大きく揺さぶる広がりをみせてきており、この潮流はしばらく続くのではないかと予想されます。

そうなると、会社としては、非正規社員の待遇をわずかばかり引き上げる小手先の対応では足りず、全社員の賃金体系から見直さなければならない時期が早晩やってくることになるでしょう。つまり、これまで正規・非正規といった入社時の「身分」に応じて自ずと固定されてきた賃金体系をいったん解体してフラットな状態に戻した上での再構築が必要になってきます。その際、ベースとなるのが、各人の職務と能力に応じた給与、すなわち職務給+成果主義型賃金が最も平等で主流になるのではないかと考えられます。

非正規社員にとっては、このような変革により正社員との格差が次々と是正されるのですから喜ばしい流れになりますが、既得権益をもっていた正社員からは激しい抵抗が予想されます。実際、職能給(年功序列)を維持した上で、一部に限って成果型賃金制度を導入しようとした場合でも、正社員からは「就業規則の不利益変更に該当する!」として数々の訴訟が起こされています。最近、私自身も企業から相談を受け、紆余曲折を経て、最終的に就業規則を一部変更して成果型賃金の導入までこぎつけた事例を経験しましたので、次回以降、留意点等を説明していきます。

 

弁護士 市村陽平


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