ご相談事例

従業員採用場面での情報の取得について


2021年がスタートしました。コロナの収束が見通せず、働き方の変革が進む中で、昨年に引き続き今年も労働分野で大きな動きがありそうです。特に、高年法改正により70歳までの就労を確保することが努力義務となりますので、その関係で高年者の賃金カットがどの程度であれば許されるのかという問題は、裁判で争われる機会が一段と増えるのではないでしょうか。

さて、1月6日の朝日新聞の朝刊記事によりますと、大手食品メーカーのアルバイト採用面接で、応募者に体重やウエスト、既往歴などを書面で尋ねていたことについて職安から行政指導を受けたとして、問題視されていました。採用面接の場面でどの程度の情報を取得してよいのかについては、古くから議論がされていますが、最近では個人情報保護法の改正やLGBTの広まり、感染症拡大の影響も重なって、センシティブな問題となっています。記事の中では、このような質問をしていた会社に対して、ハローワークの職員が口頭で「身長、体重、既往歴を聞くのは問題がある。直ちに法律違反ではないものの、法に抵触する恐れがある。」と指導したそうですが、個人的には、会社側が業務の目的の達成に必要な範囲であると考えて質問していたのであれば、行政指導するほどの質問内容ではないという考えです。実際、会社としては、身長や体重については、作業着を作るための確認、既往歴については安全、健康に勤務してもらうためや食品アレルギーへの対応であったとのことであり、「法律違反ではないものの、法に抵触する恐れがある」という行政指導の理由より、よほど説得力があるように感じます。

近時の無期転換制度や雇止め法理の考えの下では、アルバイトといえども一度採用をしてしまえば、企業としては後に問題が発覚しても易々と解雇はできません。そうなると、採用時の情報収集というのは、正社員の採用と同様にますます重要になってきます。今回の記事で取り上げられたようなおかしな行政指導に萎縮して企業の採用面接が形骸化することにならなければいいのですが。

 

弁護士 市村陽平


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